CLILと教科書を結ぶ
CLIL(クリル)は、教科科目やテーマの内容と外国語の学習を統合して行います。
主に英語を通して、時事・国際テーマや教科科目(理科、社会などに関連した情報)を学び、学習内容への興味を喚起しながら、生徒の思考に焦点を当て、コミュニケーション能力の育成や、個人の外側にある他者・異文化への理解や発信、
国際的な意識などを高めていく教育アプローチです。
4技能(読む・聞く・書く・話す)をバランスよく統合して学び、 さまざまな思考活動(暗記・理解・適用/分析・評価・創造)を通じて、言語知識の定着と技能を発揮するステージ(実社会・国際舞台)に立つ意欲を育みます。
従来の教育環境の中で育った世代と異なり、現代を生きる子どもたちは、世界各地の情報に触れあい、さまざまな国の人々と現地・日本で交流する社会を歩んでいきます。
そのような未来を見据えた際に、母語とは異なる外国語を用いる重要性は増し、英語という第二言語を学ぶことを通じて、その手法が他の言語習得にも応用できるような外国語教育を目指していくことが求められます。
同じ大陸内でも多数の言語が存在するヨーロッパでは、複言語・複文化主義のもとCEFR(すべての言語に共通の習熟度の「ものさし」)の理念と連動する第二言語習得の教授法としてCLILの採用が進み、教科横断や総合的な学習(探究)にも通じる「CLIL」の教育アプローチは、実社会で生徒を輝かせていく力を引き出しやすくする可能性を秘めています。
また、新しい学習指導要領にある「学びに向かう力・人間性」、「生きて働く知識・技能」、「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力」などの汎用能力の育成にも通じ、「主体的・対話的で深い学び」を実践していく手法として位置付けることができます。
CLILには「4つのC」というフレームワークがあり、教育効果を引き出すための具体的な教育技法が体系化されています。
いかに生徒に思考を深めてもらう活動を提供するかというキーポイントを押さえ、
何をねらいにした授業なのかをより明確にして、授業計画をマネジメントしていくことができます。
語彙や文法の基礎を大切しながら、生徒の成長を引き出す領域へ、どのように融合していくかが教科書・教材の役割にもなってきます。
英語検定教科書「 FLEX English Communication Ⅰ(令和4年度版)」では、英語の先生がはじめて実践する際に、授業の設計・準備・評価までの手順や、計画内容の整理を助けるワークシートを取り入れて、CLIL型授業が進行しやすくなる工夫をしています。
CLILから始めるのではなく、語彙・文法などの基礎学習の延長上に最後のセクション(Final Task)で取り入れ、自然な発展学習の流れをつくっています。
SDGsやエネルギー問題、文化遺産や文学など、国際社会や異文化交流のテーマを題材にしています。
社会 | きかんしゃトーマスとSDGs | |
---|---|---|
マララと女性権利拡大への行動 | ||
文化 | 世界文化遺産リストの富士山 | |
ドナルド・キーンと日本文学 | ||
科学 | 太陽とエネルギー問題 | |
自然 | バイオミミクリー(生物模倣)の秘密に迫る |
インプットした本文の内容と新出の語彙表現、文法事項を活用しながら、個人、ペア、グループで活動に取り組ませ、積極的なアウトプットを促します。
教師用指導書(Teacher's Manual)で授業の設計や準備をサポートします。
▼「4つのC」の観点から各タスクのポイントを整理。生徒に働きかけていくイメージを具体化していきます。
Lesson 6/Final Task (教科書 p. 109)
【Final Task 設計】
Lesson6のFinal Taskを進めるにあたり,タスク内容について,以下のような図とポイントになる。
Content 教科知識 | Communication 言語知識 | Cognition 低次思考力 | Culture 協同学習 |
---|---|---|---|
Sustainable Development Goals (SDGs) | SDGs 関連語彙 | 理解 (Task❶) | グループ活動(スキット) |
Content 汎用知識 | Communication 言語技能 | Cognition 高次思考力 | Culture 国際意識 |
自分の生活の中でのSDGsの実践例 | 聞く・話す・書く | 創造 (Task❷-❺) | 地球規模の問題に対するる国際的な取り組み |
Content: | SDGsについて学んだ知識を,実生活で活用する実践例を考える。 |
---|---|
Communication: | SDGsについて学んだ語彙と日常語彙を使って,原稿を書き,スキットを演じて話し,発表を聞く活動を行う。 |
Cognition: | SDGsについての理解をもとに,実践例のスキットを創り出す。 |
Culture: | グループでの協同学習により,地球規模の問題に対する国際的な取り組みについて,自分たちの身の回りの具体例を考える。 |
▼授業の準備や流れを確認し、指導計画を作成する参考資料として活用いただけます。
ルーブリック形式で生徒の評価方法をまとめています。
それぞれの技能を5つの段階に分けることで、より的確な指導をサポートします。
Lesson6 Final Taskルーブリック(一例)
到達目標 | 5優 | 4 | 3可 | 2 | 1 | 評価方法 |
---|---|---|---|---|---|---|
教科知識 | SDGsについて豊富な知識を持っている。 | SDGsについてある程度の知識を持っている。 | SDGsについての知識を少し持っている。 | SDGsについての知識がほとんどない。 | SDGsについての知識がない。 | タスク❹の内容により評価する。 |
汎用知識 | SDGsを実生活でどのように活用できるかを理解している。 | SDGsを実生活でどのように活用できるかをある程度は理解している。 | SDGsと実生活との関連を考えることができる。 | SDGsと実生活の関連についてはあまり理解できていない。 | SDGsと実生活の関連については理解できていない。 | タスク❹の内容により評価する。 |
言語知識 | SDGs関連の語彙を豊富に習得している。 | SDGs関連語彙をある程度は習得している。 | SDGs関連語彙を多少は習得している。 | SDGs関連語彙はほとんど習得していない。 | SDGs関連語彙を全く習得していない。 | タスク❹における単語の使用により評価する。 |
言語技能 | SDGs関連語彙と日常言語を使って言語活動が十分にできる。 | SDGs関連語彙をある程度は言語活動の中で使用することができる。 | SDGs関連語彙のいくらかを言語活動の中で使用することができる。 | SDGs関連語彙をほとんど言語活動の中で使用することができない。 | SDGs関連語彙を全く言語活動の中で使用することができない。 | グループのスキット発表の内容により評価する。 |
低次思考力 | タスク❶の理解が十分であるため、タスク❷❸にスムーズに移行できる。 | タスク❶の理解ができているため、タスク❷❸への移行に大きな困難はない。 | タスク❶について一定の理解があるため、タスク❷❸へ移行できる。 | タスクの理解が十分でないため、タスク❷❸への移行に苦労している。 | タスク❶の理解が十分でないため、タスク❷❸に移行できない。 | タスク❶❷❸の繋がりを評価する。 |
高次思考力 | タスク❹の解について実生活に即した説得力のある具体例を示すことができる。 | タスク❹の解について実生活に即した具体例を示すことができる。 | タスク❹の解について具体例を示すことができる。 | タスク❹の解のメッセージが不明確で伝わりにくい。 | タスク❹の解のメッセージが伝わらない。 | タスク❹の内容で評価する。 |
協同学習 | グループでアイデアを出し合い、分担してスキットを演じることができる。 | グループで分担してスキットを演じることができる。 | グループでスキットを完成させることができる。 | スキットを完成させるにあたってのグループの協力が十分でない。 | グループで協力してスキットを完成させるのが困難である。 | グループワークの様子を観察評価する。 |
国際意識 | 世界の現状に即して地球規模の問題と自分自身との接点を見い出すことができる。 | 地球規模の問題と自分自身との接点を見い出すことができる。 | トピックについて、自分自身の問題として一定の解を出すことができる。 | 世界の現状や地球規模の問題という意識が十分ではない。 | どのような、視点を持って課題に取り組んでいるのかについての理解ができていない。 | タスク❹の内容で評価する。 |
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